線虫とは?

線虫(Nematode)は長さ0.2~5mm程度の線形の小さな動物です。

推定種数は100万種以上と非常に多くの種類が存在していることが考えられています。

生息環境は森林、農地から海や湖と幅広く、昆虫に便乗しているものも知られています。

さらに地下3600mの金鉱や南極大陸など極限環境にも生息することが報告されており、

環境耐性能力は高いことが示唆されています。

 

 

 

 

 

                                                       土壌中で見られる線虫(バーは100μm)

何をしているのか?

大部分の線虫種はバクテリアやカビを食べて自活的に生活しています。

一部の種は、ダイズやジャガイモなどの農作物を加害したり、

マツの木を枯らしたり、人畜に寄生することで病気を引き起こすなど

私たちの生活にも関わる重要な種類も存在します。

しかし、まだまだ生態がよくわかっていない線虫種も数多く存在し、特に、

森林は生物間のつながりが複雑なため、そこに生息する線虫の種類や機能は未解明です。

 

 

                                                       カビを食べる線虫(バーは100μm)

森林に生息する線虫とは?

森林の中で線虫は、土壌、枯葉、枯枝、樹木や昆虫に生息しており、

植物から供給される有機物を無機物に分解する物質循環に関わっています。

1つの場所では複数種の線虫からなる線虫群集が構成されており、

例えば、種類は森林タイプ(冷帯林・熱帯林)で20~100種と異なります。

 

さらに、構成樹種(スギ林・広葉樹林)や土壌タイプ(褐色森林土、砂質未熟土)も線虫群集に影響します。

どのような森林生態系によって線虫群集が形成されるかを解明することは、森林における線虫の役割の理解し、森林の健全性を評価する指標にもなると考えています。

 

                                                       1つの場所には多数の線虫が存在する

 

線虫ー非常に面白い生き物です。

 

参考文献; Adams et al. (2007). The southernmost worm, Scottnema lindsayae (Nematoda): diversity, dispersal and ecological stability. Polar Biology 30, 809-815.

                Borgonie et al. (2011). Nematoda from the terrestrial deep subsurface of South Africa. Nature 474, 79-82

             石橋・名和 (2008). 「寄生と共生」. 東海大学出版会, 神奈川県.

                Lambshead PJD & Boucher G (2003). Marine nematode deep‐sea biodiversity–hyperdiverse or hype?. Journal of Biogeography 30, 475-485.

                Song et al. (2017). Large-scale patterns of distribution and diversity of terrestrial nematodes. Applied soil ecology 114, 161-169.